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30歳から始める自分磨きblog

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小説「新世界より」が神がかっている その2(ネタバレあり解説など)

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この世で一番面白い小説を見つけてしまいました。

興奮そのままにこの神小説の感想と考察をしていきます。
ぜひ、ネタバレを見る前に本作を読んでください。

 

その1はネタバレなしでしたがその2はネタバレありなのでご注意ください。

machinecc.hatenablog.com

 

 

新世界より」 ©貴志祐介 講談社 2008

 

目次

疑問点など

ここからネタバレありです。ぜひとも本作を読んでからご覧ください。

※個人的な推察を多く含んでおります。

 

真理亜と守はどうなった?死因は?

教育委員会から「処分」されそうになった守と、そんな守と共に隠遁生活を選んだ真理亜。
二人はどうなったでしょうか?

→残念ながら二人とも亡くなっています。

どのような最後を迎えたかの直接の描写はありませんが、倫理委員会議長の朝比奈富子はスクィーラから届け出された二人の遺骨について、慎重に慎重を重ねて検証を行い、歯型の一致とさらにDNA鑑定の結果二人に間違いなかったと断言しています。
また、作者である貴志先生は特典映像のインタビューで
「スクィーラは人間の子供ひとりを手に入れることが出来れば、世界を変えられると気付いてしまった。そして彼は、甘言を持って2人に取り入り、長い時間をかけて信頼を得た。そうした上で、ある日突然裏切ったんでしょう。」
と語っています。
このことから、二人を手厚く保護していたスクィーラは出産のタイミングを見計らって寝込みを襲うなり、毒を盛るなりで殺害。
(呪力をもってしても、不意打ちされれば容易に致命傷を受けるのは夏祭りの惨劇でわかりますね。)
その後、二人の子供をメシアとして育て、二人の遺骨を届け出たというわけですね。

悪鬼(メシア)について

悪鬼(メシア)の正体は?

上記の真理亜と守の子供です。

正確には悪鬼ではなく、自分を「バケネズミ」だと「認識」している人間の子供です。
これは物語最終盤で早紀が瞬にヒントを与えられて気づくのですが、伏線もありましたね。

・鳥獣保護官で乾だけが生き残った理由
塩屋虻コロニーの駆除に向かった乾らは、逆にメシアとバケネズミに返り討ちに遭います。乾もメシアと鉢合わせたものの、バケネズミの服を纏い、バケネズミ語で「痛い、痛い」と通りすぎたので助かりました。
(一応、お互い顔を見てないとあるので、本当に気づかなかっただけということもありますが…。)

・大雀蜂コロニーと塩屋虻コロニーの戦争
大雀蜂の兵士たちの多くの死骸には矢が突き刺さっていたものの、死体の損壊行為が甚だしく、大半が原型を留めていないとされ、さらに証拠の隠滅を図り、それすらも燃やされていました。
富子たちはミノシロモドキから知識を得て、バケネズミがスーパークラスター爆弾を使用したのではないかと推察しますが、鏑木肆星だけは矢に損傷が見られないことに注目し、呪力の可能性に言及しました。
バケネズミに肩入れをする人間、過去に街を去った人間(ここで上記の真理亜と守の遺骨について判明)、他の町の人間、など可能性について考えますが、結局結論は出ず。
ここで早紀が、スクィーラによって真理亜と守が保護されていたことを打ち明けれていれば、二人の子供の可能性に誰かが気付いていたかもしれませんね…。

 

「真理亜がこの世に生れて来なかったとしたら…」の意味とは?

→真理亜がいなければその子供であるメシアの誕生はなく、文字通り結果的に大勢の人が死ぬことはなかったということです。

おそらく多くの方のミスリードを誘発したであろう
「真理亜がこの世に生れて来なかったとしたら、結果的にあれほど大勢の人が命を落とすこともなかったはずだから…」
の一文と、さらに、子供時代に早紀らと野原で遊んでいたときの
「真理亜には、この頃から女王様としての資質があった。」
の一文。
序盤に出てきたこの二つの文で、真理亜が守を拒絶した世界に復讐するという展開だろうなぁと最後の最後まで予想していましたが見事にミスリードに引っかかってしまいました。。
バケネズミ社会において女王様は絶対というのは描写されていましたし、スクィーラが女王にロボトミー手術を施していたことからもっとエグい展開になるかとドキドキ…。真理亜と守は二人とも(無事に?)死んでいたのでホッとするやら悲しいやら(;^_^A

 

早紀が呪力を授かったお寺での儀式の意味は?

攻撃抑制、愧死機構が正常に機能しているかの確認です。

まずは愧死機構についておさらいです。

愧死機構(きしきこう)

人間の遺伝子に組み込まれた強制的かつ強力な攻撃抑制機能。サイコキネシスを持った人間が、集団で社会生活を営むために必要不可欠なものとされている。同種である人間への攻撃を企てていると脳が認識すると、無意識にサイコキネシスが発動。腎臓および副甲状腺の機能を停止させる。これによって不安、動悸、発汗などの警告発作が起き、なおも攻撃を続行した場合、低カルシウム血しょうによる発作で窒息死するか、カリウム濃度の急増により心停止に至る。
新世界ことば辞典より(https://www.tv-asahi.co.jp/shinsekaiyori/dictionary/

そして清浄寺の儀式について説明します。
祝霊のお迎え=呪力の発現をした早紀は儀式のために清浄寺を訪れ、町で最高の人格者たる無瞋上人と対談します。
そこでは、不眠症の人すら熟睡したという法話から、おにぎりをくれない友達についてどうおもいますか?そして、人の痛みを感じることができますか?というような問いかけがされます。
「できる」と答える早紀に対し、無瞋上人は小刀で自らの膝を刺しながら
「どうか私を助けてください。」
「あなたが私を苦しめているのですよ。」
早紀にこんなことをさせないでくれと懇願します。(なかなかに理不尽ですね…。)
痛みを感じていますからやめて、という早紀に対し、言葉で言うだけで本当に感じてはいないと無瞋上人は自傷行為を続けます。
そして
「私を殺さないでください。」
という言葉が引き金となり、早紀は左胸から脳天にかけて鋭い痛みを感じ畳に倒れてしまいます。
これにより早紀は「他人の痛みを自分のこととして」言葉だけではなく、実際に感じることができると認められ、呪力を制御する真言マントラ)を授けられる…。

攻撃抑制、愧死機構について発覚するのはまだ先の話なので、どういう儀式だよ…と最初読んだときに思ってしまう場面です。
新世界より」は徐々に真実が見えてくるので、2週目読むとこの場面はあの設定に繋がるのか!と気づく場面が多数あるので2週目も大変楽しく読めます(*‘∀‘)
また、この儀式をもって愧死機構の確認をしているのですが、もしここでその確認がとれなかったらどうなるのでしょうか?
儀式後に、帰ってきた早紀を両親が5分間も抱きしめた、とあるのでもしかしたらその場で「処理」されるのかもしれませんね…。

 

瞬には何が起きた?

業魔となり、自らの呪力で自殺しました…。

まずは業魔についてです。

業魔(ごうま)
呪力を持ちながら、己の業(ごう)から“人間ではないもの”へと変化した存在。漏れ出した呪力が周囲の生き物や環境にまで影響を及ぼすといわれる。
新世界ことば辞典より(https://www.tv-asahi.co.jp/shinsekaiyori/dictionary/

青沼瞬は頭脳明晰かつ知的好奇心が強く、優れた呪力、さらに性格も朗らかで優しいと、クセもの揃いの一班の中でも特に将来を期待され、早紀や覚も惚れる頼れる男の子でした。
しかし無意識化での呪力の漏出がおきてしまう「業魔」と化し、周囲のものを「異形化」させます。大地を液状化させ、愛犬のスバルは甲羅が生えたアルマジロの化け物にように、里の木は触手をもつタコのように、ムカデは頭と尾がくっついた輪のように…。ものや生物だけではなく、自決するよう渡された毒すらも分子構造を変性させ無害化しています。
結局、瞬のいる家あたり一帯が大地に飲み込まれ、瞬はそのまま死亡という扱いで物語は進みます。
直接死んだという描写はないので、実は生きてるかも…とも思いますが、瞬の精神体が早紀を何度も導くのでその可能性はないだろうと思います。
ただ自殺というニュアンスはまた異なるかもしれん。
自分の意図しない呪力の漏出の結果、これまた意図をせず(瞬は来ることがわかっていた)大地に飲み込まれて…ということで自殺?に成功しましたが、そもそもこの世界の住人は自殺ができるのか?という疑問も浮かびます。

 

書きたいことはやまほどもあるのでどんどん追記していきます(;^_^A